鳥取市賀露港での市民風車の取り組み(2003~2005)

自然エネルギー市民の会では、市民風車の建設に向けて各地で検討を行ってきました。
2003年頃から2005年頃にかけて鳥取市の賀露港(旧鳥取港)やでの建設について検討を行いました。その取組について紹介します。

取組みの経緯

鳥取市賀露港周辺地域の大工、漁師、造船業、職人、設計技師などを職業とする男性メンバーで構成された賀露おやじの会は、環境の保全や創造に関する活動、健やかでたくましい子どもたちを育成する活動を通じて、地域社会の健全な発展に貢献することを目的として活動する市民団体である。賀露は鳥取市の北部、海岸沿いの砂丘地帯にあり、市内を流れる千代川の河口部に接している地域でもあり、冬季は強い北西の風が吹き、春はフェーン現象による強い南風が吹く地域である。そのため鳥取県による風力発電事業の候補地にも挙げられ、風況精査も実施された。この時の風況精査結果では、高度30m地点で5.6m/s・年と良好であったが、建設予定地が港湾内であること、鳥取砂丘からの景観などを理由に、鳥取県では別のサイト(鳥取放牧場)を候補地として取り組むことになった。
そうした状況の中で、賀露おやじの会は、環境保全活動と地域づくりを進めるという視点に立って、早くから市民出資の風力発電所設置構想を提案し、その実現のために独自に検討を進めていた。当時(2003年11月頃)、自然エネルギー市民の会はまだ設立準備中であったが、市民風車など自然エネルギー利用を目指して設立準備を進める中で市民風車の可能性のあるサイトを探していた。たまたま設立準備団体のメンバーおよび鳥取での取り組み関係者の両方からの紹介があり、鳥取での市民風車の可能性についてNPO賀露おやじの会と設立準備メンバーとの最初の意見交換が2003年11月に実現した。自然エネルギー市民の会設立後も交流と意見交換を進める中で、設置地域の住民の主体性を尊重しながら、他地域の市民が協力するという、自然エネルギー市民の会と賀露おやじの会が目指す理念も一致したことにより、共同で取組むことに合意し実現に向けた取り組みが本格的にスタートすることになった。

賀露港での市民風車の課題

賀露港での市民風車の取り組みの主な課題として、一つはサイトが鳥取港から近く航空法による構造物設置の高さ制限のため、大型の風車設置ができないことから、事業採算性に問題が出てくること、二つめには、建設に向けて地元自治会、漁協、関係機関の了解が必要であること、そして三つめには、二つめとも大きく関係する課題として、鳥取砂丘から建設予定地が見えることによる景観問題の3点が共有された。
一つめの高さ制限による事業採算性の低下については、中古機の利用による本体価格の低減可能性や漁港内施設での自家消費による余剰電力購入メニューの活用、地代・固定資産税の減免などによるキャッシュフロー改善の可能性ついて検討を行なった。
二つめの建設に向けた賀露地区関係者の合意づくりについては、市民風車の取り組みが地域の活性化につながること、ならびに地域での温暖化防止に寄与することを訴え、市民風車への理解を促すために、2004年8月の鳥取賀露港オアシス夏祭りに、賀露おやじの会とともに自然エネルギー市民の会も参加し、講演、パネルディスカッション、アトラクション、ブース出展などを行ない、地元への理解を呼びかけた。また、副知事の参加を得て、意見交換も行った。
三つめの鳥取砂丘からの景観問題については、鳥取港に風車が立った際のモンタージュ写真を用意し、それに対する感想や不安を集め市民参加型アセスメントのためのスコーピングに取り組んだ。
ただ、市民の貴重な資金を運用する市民風車の事業化については、採算面で慎重な検討が求められる。市民の会では、検討経過の中で、概ね10年以内で投資回収の見込みがあることを事業化の条件にしてきた。その理由は、1)回収期間が長期になれば、資金調達が難しいこと、2)同様に、耐用年数、事故などの未知数のリスクが増大すること、3)会として長期にわたる事業に責任を負う場合、風力発電は資金規模が大きく事業性の厳密な判断が必要なこと、の3点にある。
市民の会では、上記課題克服に向けた取り組み実施とともに事業化条件について評価を進めた結果、風車設置は厳しいという点で双方の見解が一致した。さらに条件として検討した地代、固定資産税の減免について、鳥取県の地代減免は見通しがあるものの、鳥取市の固定資産税については現時点で不明ということであった。これらの点から賀露港での市民風車建設が困難であると判断し、当面の間、保留することになった。その上で将来の自然エネルギー電力買取制度や規制の変化など条件変化によって採算性が見込まれるようになった際に、改めて設置を検討することになった。

市民風車の検討を通じて生まれたつながり

なお、こうした鳥取港での検討、交流・連携をきっかけに、大阪出身の元サラリーマンで鳥取の漁師に転身した賀露おやじの会のメンバーの鮮魚を市民の会会員などの消費者に配送販売する取り組みが生まれた。現在もその関係性は続いており、市民風車の取り組みがきっかけとなって生まれた地域活性化の一例とも言えよう。

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