市民共同太陽光発電所=“てんとうむし1号"訪問記

1月25日午後、近畿で最初の市民共同太陽光発電所「てんとうむし1号」を、(株)なんてん共働サービス(滋賀県湖南市石部南)に設置した「いしべに市民共同発電所をつくる会」の事務局長溝口弘さんをお訪ねしました。

溝口さんは自然エネルギー市民の会の運営委員を務めていただいています。

(株)なんてん共働サービスは、ビルメンテナンスや植栽管理業務を受託している会社で、知的障害のある方も働いています。

自立と共働をめざして

溝口さんは以前勤めていた福祉施設の現状に疑問を持ち、補助金に頼らず障害者が自立して働き続けられる事業をめざして会社を設立されました。この日私たちが訪問したのは、社員の皆さんが午後の業務に出発される時間帯だったので、「こんにちは」と気さくに挨拶される中に障害のある方とそうでない方、みなさんが淡々と共働している姿に接することができました。

会社の屋根に30枚の太陽光パネルが整然と並び、側壁には「12月の発電量168kWh」と大きく掲示されています。社員さんが毎日欠かさず発電量を記録している鉛筆書きの表も見せてもらいました。このパネルも社員さんが手書きで掲示しているそうです。

最初は「市民の発電所?」

現在のような補助金制度の無い時代、しかも採算性も悪い状況下で何故「てんとうむし1号」に取り組まれたのかの質問に対し、事業を起こそうと決断するのに半年、資金集めに半年、計1年かかったそうです。火付け役である中川修治さん(当会運営委員)から、最初話を聞いた時、「こんな狭い敷地で発電所?」と思ったそうです。

それから、半年間通い詰める中川さんの話を聞くうちに「太陽光はどこにでもある、太陽光パネルは誰にでも設置が可能。他に頼らず自分たちで出資し発電し使うという市民共同太陽光発電所の理念は、会社の理念と共通することに気づいた。単に原子力発電反対を訴えるだけでなく、その代替案の提示にもなるとわかったところで、すっきり決断出来た」と、その当時の経過を話していただきました。

何でも自分たちで解決

とは言っても、資金の段取りに当たって、集める自信は?補助金が無いことへの疑問はと問いかけたところ、「もともと自主・独立をめざし、補助金を当てにしない会社経営を目指していたので、補助金の有無は問題と思わなかった」と。

出資金は1口20万円、と決める時はさすがに集るか不安だったそうですが、「次に車を買い換える時、クラウンにするつもりをカローラに変えてもらえば…」といった感じで説いて回り、地元で半分、地元外から半分で工事費総額400万円を超える480万円が集りました。丁度、京都でのCOP3が話題になっていたことも大きかったとのことでした。

そして太陽光パネル設置は、溝口さん自身がクレーン車を運転、電気工事はボランティアの電気屋さんが屋根に上がり、下から応援する人も含めて皆が汗を流して組み立てたので設置工事費はほとんどかかっていないのです。正に知恵も金も汗もみんな自前のパイオニア、しかしそのご苦労を少しも感じさせない爽やかなお話でした。

普及の仕組みづくりが大切

更に、1口20万円という出資金の額について、「1万、2万であれば寄付したことも忘れてしまう。10万、20万となるといつまでも忘れない。身銭を切ることでエネルギーへの意識が変わります。何でこんな負担が必要なのか、儲けなくても損をしないしシステムであって欲しいなど、さまざまな問題認識、疑問が浮かんでくる。今の状況は決して好ましいものとは思っていない。出資者に年平均5,000~6,000円を配当している現状では資金回収に40年かかる。デンマークの市民共同風力発電所は13年で資金回収出来る制度になっていた。日本でもそのような制度を導入すべきだと思う。市民共同発電所は発電だけが目的ではなく、自然エネルギー普及のための仕組みづくり、世論と政策を変えるための入り口と位置づけています」と力強く述べられました。

また「電力会社が自社のRPS法対応設備として申請させてほしいと迫ってきている。近江商人には『三方良し』との言葉があるが、電力会社だけが『独り良し』の姿勢は問題、従って今のところ了解をしていない」とのことでした。

ご多忙な中にもかかわらず、その後に設置された「てんとうむし2号」もご案内いただきました。お話しいただく一言一言が、これから市民共同発電所に取り組もうとしている私達の胸に響くものでした。訪問して良かったとの思い一杯で家路につきました。

(記:大谷、大崎)

てんとうむし1号  事業概要

  • 設置   1997年6月1日
  • 設備容量 4.35kWh(京セラ製)
  • 工事費  400万円
  • 出資金  出資会員 18人 360万円
  • 補助金  なし
  • 発電量  別表に示す
  • 売電   全量なんてん共働サービスへ(関電とは同サービスが売買契約)
  • 分配金  1口当たり 約5,000円/年

発電概要

  • 1.発電実績
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    • 2003年 3,337kWh(157~419kWh/月)
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    • 2004年 3,792kWh(168~462kWh/月)
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  • 2.2004年12月の売買状況
     

  • (1)てんとうむし1号発電量 168kWh
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    • 内、なんてんで消費 132kWh
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    • 関電へ売電 36kWh
  • (2)なんてん消費総電力量 437kWh
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    • 内、てんとうむしより 132kWh
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    • 関電から買電 305kWh
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