自然エネルギー市民の会では、8月26日に成立となった「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」に関する声明を発表しました。
>>発表資料:声明「自然エネルギーの飛躍的普及を実現し得る買取制度の実現を!」(PDFファイル)
以下に全文を掲載します。
自然エネルギーの飛躍的普及を実現し得る買取制度の実現を!
2011年8月26日
自然エネルギー市民の会
本日、国会で電力事業者に自然エネルギーによる電力の買取義務を定める「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が成立した。法律の成立は、自然エネルギーの普及に向けて一歩前進ではあるが、この法律が真に自然エネルギーの飛躍的普及をもたらすかどうかは極めて疑問である。
この法律では、買取価格や買取期間は国会の承認を得た「調達価格等算定委員会」の意見を聞いて経済産業大臣が電源の種類や規模ごとに省令で定めることになっており、「電気事業者の利益を不当に害するおそれがある」場合には調達契約を、「電気事業者による電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがある」場合には送配電設備への接続を拒否できるとされている。また、10年後にエネルギー多消費産業を考慮した見直しをするとされている。さらに、海江田経産大臣は国会で、消費電力に対する賦課金の上限を0.5円/kWhなどと答弁しているが、賦課金に上限を設けることは自然エネルギーの普及に制約をかけることになりかねない。
再生可能エネルギーの飛躍的普及が実現するには、市民を含む広範な主体が再生可能エネルギー発電設備所有者になれるようにする必要があり、そのためには、設備所有者の必要経費が売電収入によって十分に補償されなければならない。そのような条件が保障されるように、経済産業大臣が、下記を満たすような買取価格や買取期間の設定や運用をすることを強く求める。
1.あらゆる再生可能エネルギー電力の全量を優先的に買い取るべきである。住宅用太陽光発電についても余剰電力に限定せず、全量を買い取るようにしなければならない。
2.再生可能エネルギー電力の買取期間は20年間とし、買取価格については、発電手段別に発電規模や設備設置条件なども考慮に入れて、いずれの場合も発電設備所有者の必要経費が売電収入によって十分に補償されるように設定すべきである。つまり、(買取期間中の総発電量)×(買取価格)>(総必要経費)という条件を満たすように定めることである。総必要経費には、初期費用の大部分を金融機関の融資を受けた場合の返却金をも含む。この条件であれば、誰もが公平に参加でき、普及が飛躍的に促進される。また、各買取価格は設備価格等の変化に従って設備導入年度が後になるに従って逓減する方式を採用すべきである
3.再生可能エネルギー電力の買取費用については、現行の電源開発促進税収も充て、一般消費者の負担を軽減すべきである。
4.再生可能エネルギー資源はすべて地域資源であり、その発電による利益は地域に還元すべきである。ドイツやデンマークでは、地域住民主体の再生可能エネルギー導入がなされており、利益が地域に還元されることで地域の活性化に結びついている。
5.再生可能エネルギーの普及・導入拡大は、「エネルギー自給率の向上」や「環境関連産業育成」だけでなく、新たな雇用創出、地域環境の改善、地方の活性化、一次産業の再生などの多くの良好な波及効果を生みだし、社会全体に大きな利益をもたらすことに留意して、運用すべきである。